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ジャズ習得への道

目次

ジャズを弾いてみたいです

「プロを目指す方」から「老後の楽しみにしたいという方まで」目的はさまざまですが、ギター指導を始め多くの学習者の成長を見てきました。頑張ってある程度まで弾けるようになる方もいれば、挫折を繰り返しなかなか上手くいかない方もいらっしゃいます。

「即興演奏は誰にでも出来る事だけど、限られた人にしか習得出来ない事」

私はこれまでの指導経験から、ジャズをこのように感じています。

一体どういう事でしょうか?説明をしていきます。アドリブ習得への流れを予め知っておくことは非常に大切です。

ギター初心者

ポップスやロック、ブルース、ファンクといったジャンルを演奏していた方が、何かのきっかけでジャズを知って学び始めます。教則本を買ったはいいけれど、その内容があまり膨大で手に負えず、教室の門を叩く方が圧倒的に多いです。

体験レッスンの時に受講理由をお聞きするのですが、少しご紹介しますね。

student

ジャズの教本とか読んでもさっぱりなんです

student

カッコ良いから勉強してみようと思って、
教本を買ってみたんだけど最初の数ページで頭がこんがらがってきて、
今は本棚に眠ってます(笑)

student

教本に掲載されている譜面を弾いてみたんだけど、
それを覚えたところでどうすればいいのでしょう?

student

伴奏のカラオケ(マイナスワン)に合わせて弾いてみるんだけど、
いつも同じになってしまいます

student

音階やコードを覚えないといけいないのは分かるんだけど、覚えて弾いても上手く弾けないし、ペンタトニックの方が思い通りにいくから、ついついペンタトニックで済ませてしまうけど、いつも同じに聴こえる。

student

教本読んでも分からないから、とりあえずTAB譜のコピーで形から入っています。アドリブって何?

心構え:学生で3年、社会人で5年

 これは、私が体験レッスンにいらしたジャズ初心者の方に最初にお話ししている事です。きちんとコツコツ練習を続けた学習者が、ある程度ジャズが弾けるレベルに達するのに要する時間です。もちろん練習量は人それぞれなので、目安程度です。

 私自身は学生時代1日に10時間ほぼ毎日練習していましたが、(大袈裟ではありません)それでも「今日の演奏はまぁまぁだな!、なんとかこなせた」と初めて思ったのはジャズを学び始めて2年目になるかならないかの頃でした。それまでは「自分には出来ないんじゃないか」と、何度も思いました。私が優等生であったか出来の悪い生徒であったかが問題ではなく

それだけ時間のかかることなんです

 とても重要なことをお伝えします。

ジャズをやりたい方のなかには「ガッツリなジャズじゃなくて、それっぽいのが弾きたいですよ」とお話しされる方が多くいらっしゃいますが、「それっぽく弾くこと」が一番時間を要するんです。逆に言うと、それっぽく弾ける人であれば、C Major Scaleを使用しているだけでもジャズになります。

 即興演奏はそれだけ特殊な技術であって、それなりに時間を費やさなければいけません。練習の過程で諦めずに頑張った人だけ「自由に演奏する」という世界へ行くことができます。そして時には、どこからかフレーズが舞い降りてくる貴重な体験もすることになるでしょう。ただ、そこまで勉強しなくても、

●ペンタトニック一発で弾くとか
●コピー譜だけを弾くとか、
●フレーズばかり練習して一発の中にあてはめるとか・・・・

 そんなジャズっぽさを楽しむこともできます。私はそれを悪いとは思いません。その段階で本人が満足出来るのであればそれもアリだと思います。ジャズ指導を始めてから、私自身が勉強させていただいたことの1つに「ジャズ学習者の全員が本格的な即興演奏を求めていない」ということでした。ちょっとジャズをかじってみたい人。ちょっとジャズっぽさが欲しい人など。私自身は本気で音楽に向き合ってきたので、当時はみんなそうだと思い込んでいました(笑)

でも、やるからにはしっかりとしたジャズの即興演奏を学びたいですよね。今の気持ちを忘れずに、本当の意味で自由に演奏してみたい方だけ先に進みましょう。

ジャズ習得に必要な栄養素

 下記の図はビタミンAとか、たんぱく質とか、1日に必要な栄養素の円のように「ジャズ習得の為に必要な項目」をザックリと配置しました(もっと細かく分類することもできます)。学習者はこれらの項目を最低限必要なレベルまでは並行して練習する必要があります。理論を知りたくても理論ヲタクはダメ。譜面を読めるようにしたくてもそればかりはダメ。それぞれの技術が最低限必要なレベルを超えるまではバランスよく練習しましょう。

※上図は、ハードロックをやってきてジャズに転向した例。
✅指はかなり速く動きます。
✅そこそこコードも弾けます。
✅理論は理論書を少しだけ見た程度。
✅指板上の音は5,6弦ならかろうじて分かる程度。
✅譜面(TAB譜ではありません)は中学校以来まともに読んだ事なし。
✅リスニングはジャズは0だけど、ブルース、ロックはたくさん聴いてきた。
✅即興演奏はスリーコードに合わせてペンタトニック・スケールで少し遊んだ程度。

練習過程:今を楽しむ

 ジャズ学習(研究)の道は壁だらけです。それは演奏がある程度できるようになった私達でも同じことで「いつも壁アリ」です。でも、だからこそ常にクリエイティブに音楽に向き合っていられます。私自身は「自分の演奏に満足したら、それはジャズミュージシャンを辞める時」と思っています。レッスンを受講して数年経過した生徒はこう言います。

student

最近気付いたのですが「練習してできるようになった!」と思ったら、すぐに次の課題が見えてくるんです。それも自分が乗り越えた課題よりもさらに大きな課題となって!

習得をスムーズにするコツは、練習している過程。そう、今を楽しむ事だといつも言っています。

苦しい、辛い!と思えば「音楽」は「音学」となり、そのまま継続すると「音が苦(おんがく)」となります。いつも楽しむことを忘れないようにしましょう。うまくいかない時も気持ち次第です。

模倣と即興(フレーズ)

「即興演奏」をするのであれば、フレーズのコピーなんかする必要はありませんよ!自由に弾いていれば、それが即興演奏です。レッスンの必要もないでしょう。しかし

「ジャズの即興演奏」を求めているのであれば、先人の偉大なジャズ・ミュージシャンたちの模倣をしなければいけません

 私達プロミュージシャンは多く時間を練習に費やして、今でこそ音楽の流れに身を委ねて自由な感覚で演奏できますが、学習初期の段階では沢山のフレーズをコピーしました。そっくりになるように繰り返しフレーズを演奏し、コード進行に当てはめる練習をしました。その記憶され使い回したフレーズ達が、次第に心に浸透し、自然な形で結びついてプレイできています。時には過去の自分が弾いた事もないフレーズが頭に鳴ることがあります。頭に鳴った音を再現できるように、ギター練習を欠かさないのです。

模倣と即興(発音)

 「ジャズらしいニュアンス」を習得するためには模倣しか方法がありません。数か月でできることではありません。簡単にプレイできてしまうのであれば、おそらく我々ジャズ・ミュージシャンの仕事は譜面に強いクラシック・ミュージシャンに全て奪われてしまうでしょう。ジャズのノリを譜面に記述する術はないため、アーティキュレーション(発音)は聴いて学ばないことには、ジャズ的なフレーズを弾いてもジャズにはなりません。カタコトの外国人が喋っている日本語に聞こえてしまいます。

コピーはニュアンスまで含めて行いましょう

一番の近道

 ジャズを習得する一番の近道は、良い指導者に習うことです。ハイレベルな技術を持っている先生になればレッスン料も高くなりますが、高額なレッスン料を支払ってでも習うことには意味があります。そこには先生自身が到達したレベル相応の、いや、さらに多くのお金と時間が費やされているからです。独学で先生が持つのと同じ技術と知識を手に入れようとしたら、数万円では足りないでしょう。時間だっていったい何年かかるのか計り知れません。だから、たとえレッスン料が高く感じられても、先生自らが長い時間をかけて培ってきた技術を教えてもらえるなら、安い投資なのです。

 定期的に演奏を評価してもらうことで、練習の方向や課題を見失うことがありません。分からないことを聞ける環境にいるようにしましょう。そして学ぶ時期に大切なことは指導者を信じることです。少なくとも1年間は講師を信じてみて下さい。きっと練習の方法がわかってくると思います。自分のやりたいことだけレッスンを受けるのは独学と大して変わりませんし、上達だけを考えたときに、学習者の経験が邪魔をしてくることが多々あります。

常に楽しみつつ、もし時間があるのなら試行錯誤して、多くの失敗からから学びましょう。

習得に向けてすべきこと

誰かに師事するのが一番の近道ですが、良い講師に出会えないことも少なくないようです。独学でのポイントを挙げましょう。まず練習内容云々の前に、

ジャズ学習がうまくいかない方のほとんどは忍耐力がありません。

 できないと思うとすぐに「ダメ」だと口にし、うまくいかないとすぐに演奏を止めてしまいます。そしてすぐに別の内容に移ってしまいます。そんな方に限って、わざわざ出来ない理由まで探して教えてくれます(笑)出来ない理由を探すなら、その理由を元に練習の工夫をしましょう。言い訳にしてはいけません。

 前述の通り、即興演奏に時間がかかるのは当然なのです。難しいことをやろうとしているのですから、みんな悩みを抱えています。もう1度書きます。みんな悩んでいます。それが普通なのです。辛いからといって楽しい練習や出来ている事に時間を割き過ぎないようにしましょう。

できないことにより多くの時間を費やすこと。それが練習というものです。その練習を楽しめる工夫をしましょう。

何を考えているか

student

先生は演奏している時、何を考えているのですか?
演奏中に音名や度数がわかっているんですか?

 これもよくある質問です。

 一言で回答すると「何も考えていません」音楽の流れに乗っているとバンドの音もよく聴こえてきますし、すぐ反応もできます。しかし、この返答が学習者にとってアドバイスにならないことも知っています(笑)演奏する時に音名や度数を全て意識しているか?と聴かれれば「No」です。音名や度数よりも歌心。心に鳴る音が優先ですが、タイミング次第で音名や度数は見ています。フレーズの節々、ソロや伴奏の進行具合など、どの状況の時に見ているかは明確には自分自身分かりませんが、意識するタイミングはあります。

生徒たちと違うのは理解力です

 例えば「CM7の5度は何の音ですか?」と聞くと、ジャズ経験のある生徒であれば、1、2秒で「ソ」と答えられます。日本の音楽教育では小さい頃からドレミファソラシドです。Cキーで考えることは容易です。我々プロミュージシャンはそれが12 Keyに渡って、同じ感覚になっているだけです。「A♭M7の5度は?」と聞かれれば「E♭」が当然なんです。いちいち数えたり音名を口に出すこともありません。そのため、演奏中に音名や度数を意識していなくても見えているようなものなのです。ただ、意識して音を出しているかどうかの問題です。

 そのように聞いて学習者が注意しなければならないのは、「だったら度数の訓練を徹底的にやろう!」と時間を費やし過ぎてしまうことです。我々プロミュージシャンは「音の理解を無意識下まで落とすこと」を目標に練習してきたのではありません。激しいコード進行の曲でも、音を選択して自由にソロを取ることを目標に練習を続けた結果だということです。せっかくギターを弾く時間が取れる時に、お勉強のように音名や度数を学ぶのは効率的ではありません。

音名や度数のトレーニングはギターを持っていないときに行います。

量が質に転化する

結論として、学習初期の段階では質より量を練習することが大切!

たくさん聴いてください

ソロが鼻歌で歌えるぐらいまで聴きましょう。いつか心にジャズラインが鳴るようになります。

たくさん試行錯誤しましょう

フレーズを作ることは時間を止めた即興演奏です。

フレーズを作ることによって指板にいろいろなものが見えるようになります。

たくさん耳コピ(模倣)しましょう

最初は1小節でも構いません。耳コピは時間がかかりますがとても効果的です。私は耳コピをせずに上手になった方を見たことがありません。耳コピしたラインをそっくりになるまで弾きましょう。特にリズムとレガートに気を付けて。それがジャズの発音になります。

たくさん使いまわしましょう

1曲だけじゃなく、知っているスタンダード曲に応用するんです。キーが違うなら移調させましょう

たくさんアドリブを取りましょう

間違える度にいちいち止める必要はありません。

アドリブが最終目標ならアドリブの練習量を一番多く取りましょう。

継続した者のみぞ知るジャズ即興演奏の成り立ち

迷ってもいい、凹んでもいい、時にがむしゃらに弾いてもいいから、根気よく続けてみてください。師事するのが独学より優れているのは、迷っていても「とりあえずやらなければならない状況」があるからです。独学では、学習に迷いが生じた際にそこで練習を辞めてしまう可能性が高いです。続ければ何がアドリブに繋がっているのが見えてきます。続けなければ見えてこないのです。

よく使用する音階は10種ほどあります。そしてそれが12キーですから計120もの音階を覚えなければいけません。音階だけで120です(和音や理論もあるのに)それを覚えても、弾けるかどうかはまた別の問題です。たくさんの事を学ばないといけないから、少しずつで良いのです。


効率よく学ぶために、「どう時間配分をして練習するか!」がとても大切です。指導者についていれば、練習のバランスを教えてもらえますし、自分の練習に問題がないか定期的に確認してもらえるのは効率が良いですね。特に学習初期は一歩間違えば挫折に繋がりやすいので重要です。

意識の問題

練習?・・・今日はもう眠いから明日で・・・・仕方ありませんね。
練習?・・・今日は仕事が残業で明日で・・・・仕方ありませんね。
練習?・・・今日は飲み会だから明日で・・・・仕方ありませんね。
練習?・・・今日は体調が悪いから明日で・・・・仕方ありませんね。
練習?・・・今日は試験期間中だから明日で・・・・仕方ありませんね。
練習?・・・今日は出張でギターが無いから明日で・・・・仕方ありませんね。

(笑)どれだけ自分に甘いんですか!!平日仕事、バイト、学業に追われて練習ができず週末にまとめてやるという方もいると思います。ジャズ習得にはこんなにも逃げ道があるんです。心の逃げ道です。常にジャズを、即興演奏を追い求めて下さい。お仕事やプライベートが切羽詰っていて「本当にやりたいと思っていてもできない人達だっている」のです。気持ちで負けていたら出来るものも出来ませんし、即興演奏はわずかな練習時間でプレイできる程、簡単な技術ではありません。本当にプレイできるようになりたいと思うのであれば、

✅通勤通学時、休憩時に指板を思い浮かべるとか
✅手でタップをするとか
✅音階を口に出してそれを録音して聴くとか
✅夜は予定がズレ込む事が多いので朝練をするとか

生活の中で音楽を学習する時間を作れるはずです。少なくとも意識を向ける時間ぐらいはできるはずです。そして寝る前に10分でもいいからギターに向かうことで格段に伸びます。前述しましたが、ジャズの即興演奏が誰にでもできる事なのに限られた人にしか習得が出来ないのは

意識して音学に時間を費やすことができる人、できない人の違いです

「ジャズをやりたい!」と思って、少し練習しただけで出来てしまうのであればこれほどの魅力は感じないと思います。ジャズの勉強はそんなものです。コツコツ取り組みましょう。

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