1/31レッスン配信しました。 Lesson Room

ジャズ言語習得ステップ

「ジャズ言語習得」に向けて、練習の前に知っておきたい「習得までのステップと流れ」アドリブ習得への道でも説明しましたが、ジャズ習得には様々な内容を並行して練習することが大切になります。年単位の長い道のりですから、自分の練習が本当にうまく進んでいるのか、練習の仕方は合っているのか、不安を覚える方も多いことでしょう。ここでは、ジャズ言語の習得への大まかな流れを説明していきます。

目次

ジャズの習得 ≒ 言語学習

 音楽と言語は違いますが習得までの流れには共通項が多く、言語学習と同じステップで考えことで、少なくとも「日本語」という1つの言語を習得されている皆様には理解しやすくなることでしょう。言語習得には、まず沢山聴くことです。ジャズだって同じように、まず沢山聴いてみればいいのです。

逆にいえば、聴かないものはプレイできるようになるとは思えません。

<この時期に大切なこと>

こんな風に演奏出来るようになりたい」って思いながら音楽聴いていますか?

何かをしながら音楽聴くのは聴いていることにはなりません。

鼻歌で歌いたくなるようだったら。または踊ってしまいたくなるようであれば、バッチリです!!

ひらがな50音 ≒ スケール

 日本には平仮名・カタカナ・漢字・数字・ローマ字など色々ありますね。例えば、日本語の平仮名50音を覚えるということは、音楽のメジャー・スケールやマイナー・スケールなど音階を知ることと似ています。一度に全て覚えられないのは当然ですし、使わなかったら忘れるのも当然ですよね。新しいスケールを覚えたら、まずは構成音を自分の言葉で理解しようとする。そして音楽としてたくさん弾く!これがスケールを覚えるためのコツです。音階通りに上下するだけではありません。「音楽として弾く=リズムに乗って弾きます」。リズムに乗っていれば1音でも音楽です。

<この時期に大切なこと>

音階を単なる指の運動のように弾いていませんか?50音を覚えるのに、「あいうえお かきくけこ さしすせそ・・・」なんて覚え方はしません。「言葉として使いながら」覚えていきます。メジャースケール1つでも、どうやったらカッコいいか?を考えてみましょう。沢山聴いていなければ、何がカッコいいかも分からないのです。

バブバブ喋る

 私のジャズレッスンでは、レッスン初日からアドリブを演奏するのですが、ジャズを学び始めて間もないのにもかかわらず、「先生、私は上手く弾けません!」と途中で弾くのを諦めてしまう方も多いです。大人になるほど「上手く弾けないのは恥ずかしい」という気持ちも大きくなりますから、生徒の心もよく分かります。下手で構わないので、諦めずに弾き続けましょう。

 英語を学びたいなら、現地へ行ってたくさん話すのが一番です。ジャズだって同じです。メジャースケールを覚えて、沢山弾くことをおススメします。赤ちゃんが言葉を覚える時にバブバブ言ってるのと同じことを音楽でするんです。最初は何言ってるのか分からず言葉になりません=スケールを弾いていてもジャズになりません。でも、赤ちゃん本人は必死で喋ろうとしています。もし「ボク、うまく喋れないから」とバブバブ言わない赤ちゃんがいたとしたら、心配になってしまいますよね。「間違えてもいいからたくさん喋る→たくさん演奏する」のです。

赤ちゃんは50音を覚えてからバブバブしているわけではないので、ジャズ学習者がいきなり12音すべてを使って弾く必要はありません。赤ちゃんのように耳だけで習得を目指したら、途方もない時間が必要です。そこは上手く考えて、C Major Scakeの「ド」と「レ」だけで遊ぶ。慣れてきたら「ミ」も加えて遊ぶ。そんなイメージです。

 赤ちゃん(生徒)はご両親(CDや講師)を真似しようとします。同様にたくさん真似をして遊んでみましょう。失敗を繰り返しながら使い方を学びます。子供が「おじゃまたくし」と言って恥ずかしがりますか?話すのをやめますか?学習初期はたくさんミスをして構わないのですよ。ミスをして少しずつ覚えていきます。

<この時期に大切なこと>

上達に必要なエラー数があります。とにかくトライしましょう。

量が質に転化する。それが即興演奏を学ぶ近道です。

単語を覚える

 「メジャースケールで思い通りのジャズにならないなら、よし!もっと面白いオルタ―ド・スケールを覚えよう!」と、意気込んでも結果は見えています。オルタ―ド・スケールは複雑な音階です。赤ちゃんにいきなり横文字を覚えさせようとしているようなものです(バイリンガルならともかくね)。外国人の方が50音を覚えたところで、日本語は話せませんよね。メジャースケールでジャズらしくならないのは、全て自分自身の問題なのです。スケールのせいではありません。

メジャースケールだって弾き方次第でジャズになる!

 そこで短い単語を覚えていきます。単語の最小単位は2拍4音(8分音符×4個)です。コードトーン・アルペジオも立派な単語です。それなり聴かせるには、ジャズらしいニュアンスで演奏する必要があります。そんなニュアンスを習得していない方は、外国人の方が妙なイントネーションで、「こんにぃ〜ちわぁ」と言っている状態かもしれません。

<この時期に大切なこと>

いきなり長いツーファイブ・ラインを演奏していませんか?

即興演奏を昔の日本の英語学習のように練習しないようにしましょう。

つまりどういう事かと言いますと、数十年前の日本の学校では英語をセンテンス毎(フレーズ毎)に習います。私が学生の頃は、「How are you?」と聞かれれば、90%以上の中学生が「I’m fine,thank you 」と答えていました。

バードくん

いつも元気なんかい!

近年の教育は違うかも知れませんが一昔前はそうでした。同様に、ジャズの長いフレーズをどれだけ記憶しても即興演奏にはなりません。「でも、ジャズギター講座にはフレーズを沢山記載してますよね?」と言われそうですが(汗)

 仰る通りです。ジャズっぽさをすぐに感じる為にはフレーズ練習は一番ですし、TAB譜だって大歓迎です。そうやって練習することで「なんとなくジャズが弾ける」気になります。近年はそういった教則本で溢れていますし、私はその類の教則本を否定してはいけません。ジャズを身近なモノとして、ジャズ人口を増やすことにも繋がりますし、皆がみんな、本当の即興演奏を求めているわけではないのですからね。「ちょっと、ジャズっぽく弾いてみたいけど、難しいのは嫌」という方がどの程度いるのか、私は自身の指導経験から分かっています。例外的に、ほんの一握りですが自己流でも本当の即興演奏に辿り着ける方もいます。

フレーズばかり覚えて弾いている状態でも、何年も演奏を続けたらきっと気付くことが出来ます。

✅フレーズをどんどん繋げて、アドリブは取れるけど、結局フレーズ以外は何も弾けないということに。

✅フレーズ以外は、メジャースケール(orマイナースケール)で適当に弾いているだけということに

✅ジャズ言語がどんなものか、根本的に理解していないことに。

ジャズの演奏がどう組み上がっているのかを知りましょう。「引き出し」という細かい単語学習です。

メジャースケール1発でジャズっぽく弾けない人がツーファイブ進行でジャズっぽく弾けるはずがありません。

いつでも使えるようにしましょう

 単語(短いライン)を覚えてすぐは、アドリブで演奏できたとしても取って付けたようなソロになりますが、その状態でも問題ありません。それがジャズ言語の習得過程です。一流プレイヤーもそんな時期を経験しています。取って付けたソロに聴こえるのは前後の流れが不自然なのが原因です。フレーズの頭に向けたアプローチ・ノートやコード装飾を導入していきます。ツーファイブワン進行でしか使えないような長いフレーズも細分化をして、2拍の単語にして整理&記憶すると演奏がしやすく、1つの単語がさまざま局面(色々なコード上で)使用できるようになります。

<この時期に大切なこと>

アドリブ・フレーズを心で歌いながら演奏する機会を増やしましょう。いろいろな曲を覚えて、様々なテンポ、複数のKeyでトライします。好きなフレーズはどの曲の、どの箇所でもプレイできるのが理想です。単語(2拍4音)が指と心に染み込むまで弾きこみます。

ボキャブラリーを増やす

少し言語が喋れるようになってきて、いろいろなモノに興味を持つ。子供でいえば2歳児でしょうか。「これ何?」「これ何?」を連呼します。音階の使用にもそこそこ慣れ、ネタ的なフレーズがアドリブに自然と導入できるようになった後は、ボキャブラリーを増やす必要があります。この時期が一番伸びますし、練習効果がすぐに結果として付いてくる時期です。CDから、教則本から、講師から、いろいろな単語を覚えましょう。そして長いフレーズも単語の連結から成り立っていることを知りましょう。

<この時期に大切なこと>

 最も気を付けないといけないことは、ボキャブラリーを増やすことに意識がいってしまい、単語(フレーズ)を演奏中、

✅今どこのコードで

✅何のスケールを使用して

✅どのようなアプローチで演奏しているか?

これらを意識しなくなることです。

 無意識でプレイし続けると、フレーズはもはや指の動きで覚えている状態です。さらに厄介な事にこのボキャブラリーを増やすという練習が【実に楽しい】のです。

「楽しいからいいじゃないか!」とお叱りをいただきそうですが(汗)もちろん、楽しむことは大事です。楽しいからフレーズ練習に時間を割き過ぎてしまうのです。単語のボキャブラリーが増えている状態でアドリブを演奏すると、それなりに弾けているように聴こえるため、学習者自身の基礎力が徐々に落ちていることに気付けなくなります。この時期に大切な事は「基礎練習と並行すること」です。音の理解、スケール練習、コードトーンの練習、狙った音を出す練習といった基礎練習を疎かにしないようにしましょう。

基礎力の重要性に気付いたとき、学習者の演奏レベルが1つ上がります。

言語遊び

 ある程度の単語を覚えたら「言葉ゲーム」をします。子供でいえば3歳児ですね。「連想クイズ」や「しりとり」、「逆さ言葉」と言ったゲームです。それなりにジャズの単語を覚え、アドリブに入れられるようになったら、音楽でも遊んでみます。勿論ゲーム感覚で気楽にやります。

 メトロノームの上だけで、メロディを弾き、ソロを演奏します。これを無伴奏ソロと呼びます。伴奏のカラオケに頼ってはいけません。自分でコードを弾くのも禁止します。チェックポイントは以下の点、

✅演奏を止めていませんか?
✅自分が何の音を演奏しているか理解していますか?
✅今、どこを演奏しているか把握していますか?
✅しっかりとコード感が出ていますか?

<この時期に大切なこと>

 1つ1つの単語(2拍程度のフレーズ)を自分なりに変化させる楽しさを知ります。あえてフレーズを弾かずに、スケールだけで音をイメージして演奏してみます。知っている動きだけでソロを演奏しようとせずに自由に弾きます。自由に!と言われても、どこか型にハマろうとする自分に気付きます。

「◯M7のアルペジオを少し変化させて◯6にしたらどうか?」と音を変化させたり、「このスケールをこうジャンプしてみたら、どんな風に聴こえるかな?」と基本を踏まえた上で自分なりのサウンドを模索するのですが、固定観念に縛られないようにする発想力の源は「遊び心」です。

自己の形成と言語学習

 単音での無伴奏ソロでコード感がしっかり出せた段階で、1つの到達すべきステップ(最低限必要なレベル)はクリア出来たと思ってください。しかし、これはジャズの中でもビバップ技法の一部を習得しただけに過ぎません。コード感を出すにしても、どの程度の音数で演奏するか?どのように聴かせるか?など、ここから自分自身の音楽の好みを、今まで以上に大切にしていきます。自身では考え付かないような歌心を理論的に追及していく段階でもあります。別のコードを想定したり、意図的にユニークなインターバルを使用したり、モード期以降のジャズを沢山聴くことで自然と新しい音の感覚が身体に入ってきます。

ここからがジャズの出発地点ということ

 いつも自分が心地よいと思うジャズを聴いて下さい。それが心の中の音楽を育みます。万人受けするジャズはありませんが、名盤といえど「良い演奏と悪い演奏、好きな演奏と嫌いな演奏」があり、それぞれ個人によって受け取り方が違います。名盤がすべて好きな演奏だとしたら「自分」というミュージシャンの存在価値がありません。しかし、バランス的に良い演奏&好きな演奏と感じる方の割合が多いから名盤となっているわけですから、どこがいいのか?理解できるように努めましょう。名盤をハナから否定してはいけません。

沢山聴いて自分が好きな多くのジャズを自分の心で融合していきます(勿論、意識的に出来る融合方法は何もありません。)音楽を表現する力を私は「音楽力」と呼んでいますが、この音楽力で自分の演奏を判断します。これはあくまで、しっかりとジャズの伝統を受け継いだ上でのお話です

<この時期に大切なこと>

最後は自分がカッコよいと思えば、どのような演奏でもよいのです。音楽は「合っている、間違っている」の正誤のある世界ではなく「カッコいいか、カッコ悪いか」の言語であり、共感してくれる人が多ければ名演となります。

目次